iPadからMacBook Proを遠隔操作してみた


13インチMacBook Pro
13インチMacBook Pro

 13インチMacBook Proといえば、均整なアルミのボディーに、デジタルライフを楽しむための機能をギュっと詰め込んだプロダクト。国内でも人気が高くて、「初めてのMac」として選ぶ人も多いです(Apple Storeで見る)。

 本連載「目指せ快適! MacBook Pro長期レビュー」では、本体の見所や併せて使うと便利な周辺機器、覚えておくと便利なソフトの設定方法など、MacBook Proをより楽しく使うための情報を提供していきます(連載の目次)。


iPad
iPad

 ついに国内でも発売となった「iPad」。購入したMacBook Proユーザーも多いはず。Macは仕事など重めな作業向け、iPadはプライベートな軽めの作業向けとして使い分ければ、快適なデジタルライフを過ごせるに違いない。

 しかし、慣れた道具に回帰したい欲求は誰しもあるはずで、筆者の場合はiPadからMacのテキストエディタを使えればいいのに、と考えている。少し長めの文章を思い立ったとき、離れた場所にあるMacBook Proまで足を運ぶのではなく、iPadからログインしてEmacsとATOKで入力作業を進めたいのだ。

 そこで考えたのが、MacBook Proの画面共有機能(VNC)を有効にして、iPadからVNCクライアントの「Mocha VNC Lite」でリモートログインするという方法()。iPadのソフトウェアキーボードを使い、Mac上で起動したテキストエディタで日本語入力しようという考えだ。

 作業手順は、システム環境設定の「共有」パネルで「画面共有」を入にして、アクセスを許可するユーザーを登録すればOK。「コンピュータ設定」ボタンをクリックし、VNCクライアントからログインするときのパスワードも登録しておこう。

システム環境設定の「共有」ペインで画面共有を有効化したあと、ログイン用パスワードを登録しておくこと
VNCでログインし、Cocoa Emacsで日本語入力してみたが……実は、IMEのトグルはメニューエクストラを操作している

 肝心の結果だが……テキストエディタという頻繁な書き換えを伴わないアプリケーションなだけに、描画面でのストレスは感じないものの、いかんせんレスポンスが鈍すぎる。一呼吸、二呼吸おいてからソフトウェアキーボードで入力した内容が反映される印象で、とても実用になりそうにはない。

 Mocha VNC Liteの場合、「Command」など特殊キーはMacへ送信されないため、「Fn」キーは使えず、IMEの切り替えすらメニューエクストラをクリックして行なわなければならない。システム環境設定の操作など、ボタンをオン/オフする程度の操作にとどめておくことが正解だろう。

Bluetoothキーボードを使う

Bluetooth接続のキーボード「Apple Wireless Keyboard」。価格は6800円

 レスポンスの鈍さはソフトウェアキーボードにある可能性も否定できず……と考えた筆者は、iPadで新たにサポートされたBluetoothキーボード(従来iPhone OSでは非対応だったHIDプロファイルがサポートされた)も試すことにした。

 手順はかんたん、「設定」でBluetoothを有効化したあと、iPadにつなぐApple Wireless Keyboardの電源を入れて、画面に表示された数値を入力すればいい。

ペアリングが完了すれば、外部キーボードを利用した入力作業が可能になる

 本連載の主旨と一致しないため詳細には触れないが、iPadでの外部キーボードを利用した入力作業は思いのほか快適。カーソルキーはもちろん、「Command」+「C」キーや「Command」+「V」キーといった主要なショートカットキーを利用できるので、MacBook Proと近い感覚で作業できる。

 「メモ」では、Mac OS Xのテキストエディット同様に、Emacsライクなキーバインド(「C-a」や「C-e」)も使えることを確認している。

 前述のMocha VNC LiteでもBluetoothキーボードを使えるかどうか試したところ、「一応」は成功した。というのも、キー入力は受け付けられたが、ソフトウェアキーボード以上にレスポンスが鈍く、しかも特殊キーの入力がVNCサーバであるMac OS X側に通知されないため、「Control」や「Command」、「ESC」など特殊キーの大半が利用できないのだ。

 例えば、「Command」+スペースバーで入力モードを変えようとしても、iPhone OS側のモードが変わるだけで、Mac OS X側には何の変化も生じない。このVNCクライアントでBluetoothキーボードを使おうという試み、残念ながら実用どころか一時しのぎにも使えないことが判明した。

Mocha VNC LiteでBluetoothキーボードを使い日本語入力……はまったく実用的ではなかった

SSHクライアントでiPadからMacへログイン

 SSHクライアント機能を備えたアプリを導入すれば、iPhoneやiPadからSSHサーバにログインできる。Mac OS Xの場合、システム環境設定の「共有」パネルでリモートログインを有効にすれば準備は完了。これでiPadからMacBook Proを、コマンドベースで遠隔操作できるようになる。

 利用したアプリは「TouchTerm SSH」だ()。現行バージョンはiPadへの最適化が未了のため、2倍表示で使わざるをえないが、動作自体に問題はなかった。iPadのソフトウェアキーボードはキーピッチに余裕があるため、むしろiPhoneより使いやすいと言っていい。

ログイン後に設定画面で「Translucent KB」をONにしておくこと

 Bluetoothキーボードも試してみたが、こちらは「アリ」だ。Mocha VNC Liteと同様、「Control」など特殊キーが使えないため操作に支障はあるが、画像の転送がないぶん帯域に余裕があり、キータッチから画面に文字が表示されるまでのタイムラグが少ない。特殊キーの入力もアプリの機能で対応できるため、シェルの行編集機能をガシガシ使おうとでも考えないかぎりは、意外に困らないのではないだろうか。

iPadで「Touchterm SSH」を操作しているところ。画面では分からないが、Bluetoothキーボードを使っている

筆者紹介──海上忍


 ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、)など。



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