今度は「Lion」―「Back to the Mac」で次期OS Xが明らかに

 次のOS Xは「Lion」(ライオン) ― 米国時間20日に開催されたイベント「Back to the Mac」で、AppleはMac OS Xの次期バージョン「Mac OS X 10.7」(Lion)の概要を発表した。新「MacBook Air」の発表という一大事件もあったが、ここではLionに絞りその概要をまとめてみよう。

「Lion」こと「Mac OS X 10.7」の発売は、2011年夏が予定されている

「Back to the Mac」、その真の意味

 Back to the Mac(Macへの回帰)と題された今回のイベントは、メインが次期OS XのLionでサブが新MacBook Airという内容。「iLife '11」とMac版「FaceTimeの」話もあったが、それほどインパクトのあるトピックではなかったと思う。

 Macへの回帰というイベントタイトルは、WWDC 2010ではほぼスルーされたMacプラットフォームに配慮したこともあるだろうが、成果をMacに反映するという意味合いもある。成果とは、iOSの評価と成功の源泉ともいえるユーザーインターフェースだ。

 その1つが「LaunchPad」。iOSでは、Macのデスクトップに相当するホーム画面上にアイコンが並び、これをタップすることでアプリを起動できる機構を採用しているが、LaunchPadはこれに習い「アプリケーション」フォルダーの内容をデスクトップ上に透過表示する。「Magic Mouse」上をフリックすれば画面が切り替わるなど、操作性もよく似ている。

iOSの長所をMac OS Xに取り入れたというラウンチャー機能「LaunchPad」

 これまでもAppleは、「アプリケーション」フォルダーへのアプローチを迅速化する手段を提供してきた。Mac OS X登場当初から存在するDockは、そもそもラウンチャーとしての機能を兼ねているし、LeopardでサポートされたDockへのフォルダーの登録(スタック)も同一線上にある。しかし、Dock領域はアプリケーションを登録できる数が少なく、スタックもアプリケーションの数が増えるとスクロールを余儀なくされ操作ミスの原因となっていた。広いデスクトップをラウンチャーとして使うことの合理性は、まさにiOSによって証明済みだ。

フォルダーを作成し整理できる

「Mac App Store」はデベロッパーに活況をもたらすか?

 もう1つが「Mac App Store」。こちらは説明不要、ズバリ「Mac版App Store」だ。Appleが決済機能を備えた販売用プラットフォームを提供し、消費者は審査を経たアプリケーションをそこからダウンロード購入できる。開発者は売り上げのうち3割をAppleに支払う形となるが、在庫や返品のリスクから解放されるうえ、世界を対象とした販売網を手に入れることができる。

 iOSのApp Storeとは異なり、ユーザーは従来どおりCD-ROMやインターネットからのダウンロードで自由にアプリケーションを入手できるが、App Storeに慣れた消費者のMac App Storeへの抵抗感は少ないはず。Mac App Storeが賑わえば、Mac向けアプリケーション市場の活性化につながり、ひいてはMacのシェア向上にも寄与する。

 Linuxディストリビューション「Linspire」の「Click'n'Run」など、これまでにも同様の販売方法を試みたOSベンダーは存在するが、AppleはMac Dev Center(旧ADC)を通じて開発者を手厚くフォローしている。何より、App Storeで(売上が立つことの)実績がある。しかもLionのリリースを待たず、90日後にはSnow Leopard向けにサービスを開始してしまおうという手際のよさ。

 筆者はMacデベロッパーと接触を持つ機会が少なくないが、彼らはApp Store登場当初から「これのMac版があればなあ」と口にしていた。Appleが定める仕様どおりに開発することは苦労が多いうえ、公開後もランキング上位でなければ埋もれてしまうなど懸念材料もあるが、おそらく彼らの多くがMac App Storeオープンに向け準備を開始しているはず。このプラットフォームがMacデベロッパーに活況をもたらすことを願うばかりだ。

App StoreのMac版「Mac App Store」は90日以内にオープンの予定
購入したアプリケーションはダウンロード後「LaunchPad」に格納される

これまでのデスクトップ整理機能を総動員した「Mission Control」

 Lionのもう1つの目玉が「Mission Control」だ。Pantherで導入されたウィンドウ整列機能「Expose」、Tiger以降のシステムでサポートされているアクセサリ実行環境「Dashboard」、Leopardで導入された仮想デスクトップ機能「Spaces」、そしてLionで強化されるアプリケーションのフルスクリーンモードを融合させた機能で、効率的なデスクトップの利用をサポートしてくれる。

「Mission Control」
ExposeとDashboard、Spacesにフルスクリーンアプリケーションを融合させている

 Mission Controlは、起動したアプリケーションをグループ化し、効率よく表示を切り替えてくれる。Spacesの仮想画面が4つあるとき、1つはDashboard専用画面、1つは複数のウィンドウが表示された画面、1つはフルスクリーン状態のiPhotoの画面だとすると、Misson Controlを発動するとそれぞれの仮想画面がサムネイル化され、画面の上部に現われる。複数表示したアプリケーションのウィンドウもグループ化され、画面上に配置される。

 フルスクリーンモードは、現在あるウィンドウ最大化機能の拡張版だ。ウィンドウ左上の緑ボタンをクリックするとフルスクリーンモードに入り、画面のすべてをそのアプリケーションで占めることができる。マルチタッチジェスチャーを使えばデスクトップに復帰できるので、ファイル操作や他のアプリケーションを利用するときもフルスクリーンモードのままでかまわない。

アプリケーションをフルスクリーンで表示することも、iOS由来する新機能の1つ

 以上が、「Back to the Mac」イベントで発表されたLionの機能だ。リリース予定は2011年夏、比較的小規模なアップデートにとどまったSnow Leopardから2年ぶり、Leopardから数えると4年ぶりのメジャーアップデートとなる。これ以外にも多くの新機能が用意されている可能性は高いため、引き続き動向を見守っていきたい。


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