OS X/iPhoneで「SugarSync」を試す

 本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説をあますことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

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手頃なオンラインストレージサービス「SugarSync」

 Macを含む、いわゆる「パソコン」の価格低下傾向が続いている。消費者にとってありがたい話ではあるが、あのファイルをこちらのマシンで使いたい、スケジュールや住所録の情報を全マシンで共有したいという「同期」に関する悩みがついて回る。そこへiPhoneなどのスマートフォンが加われば、さらなる混乱を招くこと必定だ。

 その解決策が「クラウド」だ。ファイルサーバーや各種情報を同期するネットワークサービスを見つけ、各マシンにセットアップ。必要に応じて同期すれば、所有するすべてのマシンで同じ情報を共有できる、という寸法。そういえばもクラウド型サービスの一種、1年9800円(メールおよびファイルストレージ容量計20GB)というコスト(高い!)に見合う使い方を早々に見つけなければならない。

 しかし、MobileMeには不満な点がいくつか。1つはファイルの受け渡しだ。iDiskでは、任意のフォルダー(Publicフォルダーを除く)に保存したファイルを共有しようとすると、ウェブブラウザーでMobileMeのサイトにアクセスして操作しなければならないのだ。ファイル単位で共有の可否を決められるのはまだしも、これは少々面倒くさい。

 もう1つは「メディアファイルに不親切」なこと。MobileMe/iDiskにはあらゆるフォーマットのファイルを保存できるが、サウンドファイルをストリーミング配信するなどと気の利いた機能は用意されていない。

 そこで注目したのが「SugarSync」。有り体にいえば、ファイル同期機能を持つオンラインストレージサービスということになるが、2GBまでは無償利用でき、OS XやWindows、iPhone/iPod touch/iPad(iOS)やAndroidとの間で同期が可能になる。無償版の場合、同期可能なPCは2台まで、変更履歴が2つ前までに制限されているが、1ヵ月4.99ドル~の有償プランに申しこめば制限はなくなる。

「SugarSync」料金プラン

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 サービスの利用に必要な準備は、SugarSyncウェブサイトからディスクイメージをダウンロード、クライアントソフト「SugarSync Manager」をインストールすればOK。起動後最初に表示される言語選択画面で「日本語」を選択し、メールアドレスとパスワードの登録やアイコンの選択など、画面の指示に従って作業すれば、メニューエクストラに常駐を開始するはずだ。

アイコンをドラッグ&ドロップすればインストール完了

(次ページへ続く)

SugarSyncでできること【1】—「ファイル同期」

 SugarSyncでは、「マジックブリーフケース」(Magic Briefcase)というフォルダーにファイルをコピーすると、登録した他のマシンと自動的に同期される。使い方は簡単、「SugarSync ファイル マネージャ」でマジックブリーフケースの項を開き、そこへファイルをドラッグ&ドロップすればいい。同期は自動処理されるため、あとはSugarSyncクライアントをインストールしたすべてのマシンからマジックブリーフケースの内容にアクセスできる。操作の単純明快さでいえば、この方法が最も簡単だろう。

「マジックブリーフケース」(Magic Briefcase)へファイルをコピーするのが最も簡単。「SugarSync ファイル マネージャ」のほか、「ホーム:書類:マジックブリーフケース」フォルダーとしてもアクセスできる。なお、環境によっては「ホーム:書類:Magic Briefcase」となっている場合もある

 任意のフォルダーを同期させる場合には、SugarSync ファイル マネージャのツールバー左端にある「同期フォルダの管理」を開き、現われた「SugarSync 同期フォルダ管理」ウィンドウで[フォルダの追加]ボタンをクリック、対象のフォルダーをチェックすればOK。あとは放っておけばファイルのアップロードが開始され、他のSygarSyncクライアントからアクセスできるようになる。

任意のフォルダーを同期対象とすることもできる

 なお、「ウェブ アーカイブ」(Web Archive)フォルダーは自動的に同期されないため、1度きりアップロードする目的で利用される。後述する「ファイルの送信」(Send File)機能でファイルのありかを伝えられればOKという場合には、同期のようには時間がかからないウェブ アーカイブを利用したほうがいいだろう。

SugarSyncでできること【2】—「大容量ファイルの受け渡し」

 プロバイダーによっては、メール1通あたりの容量を5MB以内などと制限を設けていることがある。そのような相手にサイズの大きいファイルを添付しても、メールサーバーに拒否され不達に終わるだけだ。

 SugarSyncでは、サーバー上のファイルをメールで配布することができる。SugarSync ファイル マネージャ上でステータスが「バックアップ済み」のファイルを選択し、ツールバーの[ファイルの送信]ボタンをクリックすると、ウェブブラウザーが起動しSugarSyncへのログインが開始され、ウェブメール風の画面が現われる。そこにメールアドレスやメッセージを入力して送信すると、ファイルのURLを含めて相手へとメールが届く仕組みだ。

 この機能は、相手がダウンロードを開始するときにパスワードを求めることはできないため、安全性という点では難がある。しかし、ファイルの送信機能でURLが送信されたファイルへアクセスが確認されると、その旨をメールで通知してくれるので、第3者に不正にダウンロードする可能性をある程度防止できる。

ファイルの送信機能は巨大なファイルの受け渡しに便利

SugarSyncでできること【3】—「音楽をストリーミング配信」

 SugarSyncでは、サーバーへのアップロードが完了したサウンドファイル(MP3とAAC)はストリーミング配信できる。回線はWi-Fiと3Gの両方に対応しているため、iPhone/iPod touch/iPadに(無料)をインストールさえしておけば、どこにいても音楽や映像を楽しむことができるのだ。

iOS版SugarSyncクライアントのトップ画面。ファイルのダウンロードはできないが、プレビューや再生、写真のアップロードなどに利用できる
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作者 価格 無料
ファイル容量 2.7MB カテゴリ
対応デバイス iPhone/iPod touch
およびiPad互換
対応OS iOS 3.0以降

 このストリーミング配信、プレイリストのような気の利いた機能はないものの、フォルダー内のファイルをソート順に再生してくれる。たとえば、曲をアーティストやアルバム単位で1つのフォルダーにまとめ、ファイル名先頭に再生順の数値を設けておけば、曲順を指定することができるのだ。

サウンドファイルの再生を開始すると、ある程度バッファに貯えてから音が聞こえ出す

 なお、iOS版は未対応だが、ウェブブラウザーとAndroid版クライアントは映像のストリーミング再生にも対応している。YouTubeなど共有サイトにはアップロードしたくないプライベートな動画は、SugarSyncでストリーミング、という解決方法もあるのではなかろうか。


筆者紹介──海上忍

 ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、)など。


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